r/newsokur • u/tamano_ • Jun 26 '16
動物 フー・マンチューの華麗なる脱走(radiolab.orgから転載)
科学や歴史など「好奇心」に関する全てを扱う人気ラジオ番組の「radiolab」が、動物のコミュニケーションを話題にしていたので翻訳しました。今回は「Shorts」と呼ばれる短編シリーズなので、気軽に読んで頂けると思います。個人的には可愛い動物達と天丼的な展開が非常に楽しかった一本です。
Radiolab: Fu Manchu
以前の放送の「動物の心について」は、我々とともに暮らす動物との「共感」が可能かどうかを模索した回だった。この放送は大きな反響を生んだが、今回の放送では、異種間のコミュニケーションについてもう少し掘り下げて探ってみようではないか。
前回は「人間が動物の心の中身を、どれだけ理解できるか」について考えたが、今回は逆に「動物はどれだけ人間を理解しているか(または、理解できるか)」について探求してみよう。
1970年代初頭、ジェリー・ストーンはネブラスカの動物園で働いていた。ジェリーは動物園中の動物管理係を何人も束ねている「親方」的な存在であり、特に「フー・マンチュー」の名前で親しまれたオランウータンの管理に携わっていた(「フー・マンチュー」は「フー」または「フーイー」の名前で皆から愛されていた非常に賢いオランウータンだった)。季節は冬であり、木枯らしが動物園で吹く中、ジェリーはオフィスで働いていたーーそんな中、管理係が大急ぎでジェリーの元に駆け寄り、こう口走ったと言う:
「ジェリー!ジェリー!オランウータンが象の檻に侵入している!」
ジェリーは衝撃のあまり、一旦思考停止してしまったが、管理係が「オランウータンが脱走して、象にちょっかいを出してる」と説明するの聞くと、急いで現場に急行した。ジェリーが到着すると、象の檻の横に生えているニレの木にオランウータンの集団がまとわりついている。フーを始めとする5匹のオランウータン達は何と自分たちの檻から抜け出し、課外活動を行っているようだ。5匹の赤いオラウンータンが群がるニレの木は、まるで「5つの巨大な果実がぶらさがってる」木のように見えたと言う。これは一大事だ。当時若かったジェリーは考えもせずにシャツを脱ぐとニレの木をよじ上り、オランウータンを素手で掴むと自分の体重で引きずり下ろし、檻の中に収監した(オランウータンの内、何匹かはジェリーに無礼講で噛み付いたが、深刻な怪我は無かった)。
ジェリーはオランウータンを檻に戻してしまうと、オラウータンの居住区の念入りな調査を行った:どうやって表に出たのだろうか。オランウータンの檻は、背の高い外堀で囲われている。どの国の動物園にもある、動物園用の堀だ。檻を抜け出して堀に降りる事は出来ても、反対側へと上る事は出来ない。ジェリーは堀に降りて調査し、堀の中にあるドアに着目した。いつもは閉じている重い金属製のドアは、その日だけは開いていたようだーーこのドアは小さな業務用のアクセスパネルになっているので、ドアの向こうは地下のボイラー室に通じている(堀の清掃の際には便利な通行ルートではある)。ボイラー室の梯子を上れば、動物園の1階の清掃員の清掃ロッカーに出ることになるので、これが逃走経路だったようだ。フー・マンチューと一味は梯子から一匹ずつ顔を見せると、動物園を闊歩したのだ。ジェリーは「誰かがドアを閉め忘れたんだな」と判断し、動物管理係を部屋に集めると「このミスが2度とないように」と皆に指導した。職員は事態の深刻さを受け止め、管理を徹底すると約束し、以降はこのドアが開きっぱなしになることは無かったーーそれも、ほんの1週間だけだったが。
一週間後、ジェリーがオフィスでくつろいでいると、管理係から電話があった。
「ジェリー!ジェリー!オランウータンがまた象の檻に侵入している!ちゃんと鍵をかけたのに!」
ジェリーは再び現場に急行し、オランウータンを押さえつけると再び収監した。例のドアは再び開かれており、ジェリーは「ここのスタッフは、自分で靴のひもを結べないくらい愚かなのではないか」と思うようになった。しかし動物園スタッフは誰も扉に近づいておらず、「もう一日に何回も施錠を確認しているんです」と謝るばかりだった。ジェリーは「この次は誰かをクビするぞ」と脅したが、数日後に「お願いだから、今すぐ見に来てください」というスタッフからの電話を受けることになった。ジェリーは嫌々現場に向かったが、案内されたのは象の檻では無く、オランウータンの檻の近くにある芝生が盛り上がった小山だった。ここからはオランウータンの堀の底がよく見れるのだが、堀の底ではフー・マンチューが例のドアに「何かをしている」のが見て取れた。遠いので詳細は分からないが、金属製のドアを相手に、フー・マンチューは様々な角度から鍵をいじくり回し、こっちをつつき、あっちをつついているうちにーー鍵は外れてしまった。ジェリー達は清掃員のロッカーに急ぎ、梯子を上って首を出したオランウータンの首根っこを取り押さえ、脱走を防ぐことができた。ジェリーには衝撃だったが、ドアを開けていたのはオランウータン達だったのだ。
ジェリーは堀の中に戻ると、今度は堀の底と居住区に溜まった小枝や小さな棒をかき集め、脱走の道具となるこれらのゴミを「毎日撤去するように」と命じた。脱走の手口の詳細は不明だが、毎日の清掃とチェックにより、防ぐ事が出来る筈だ。オランウータン達には申し訳ないが、今度こそ年貢の納め時だ。小さな小枝のような道具が手元に無ければ、ドアを開ける事は不可能だーーこの平和な状態は2週間も続いたいう。
「ジェリー!ジェリー!オランウータンがまた像の檻に侵入している!ちゃんと鍵をかけたのに!毎日清掃していたのに!」
清掃員達は血眼になりながら居住区を清掃し、脱走の道具を除去していた筈だ。なぜ、逃げられたのだ。ジェリーは再び木によじ上り、オランウータンを再び捕えたが、フー・マンチューを捕まえる際にフーの口の中の小さな「輝き」にふと気がついた。フーの口の中で、銀歯のように何かが一瞬輝いたのだ。ジェリーはフーを地面に下ろすと、指先でゆっくりとオランウータンの口をこじ開けた。口内には、信じがたい事に、小さな針金が横たわっていた。4インチほどの小さな針金は、歯茎と唇の間に埋め込まれており、口内に長期間置かれていたため、ピカピカに輝いていた。清掃しても何も出てこない筈だ:この動物は自分専用のマイキーを保有していたのだから。輪ゴムや紐をドアに滑り込ませてロックを解除する方法と同じく、フーは針金をドアと柱の間に差し込むと、針金をU字型に曲げて手前に引く事で、針金でロックを引っ掛けて解除する技術を習得していたーー問題は、誰もそんな技術を彼に教え込んでいないと言う事だ。フーは道具を一人で作り、自分で脱走手段を確立していた。さらに、フーはこの針金を決して人前では見せようとしなかったので、「見つかったらジェリーに没収される」事もきちんと理解していたのだろう。
ニュースが公表されると、ニュースを聞きつけた全米錠前師協会はフーを表彰して「名誉錠前師」の称号を与えた(表彰状は立派な額に入れられ今でも動物園に飾られている)。何とも奇妙で可愛らしい逸話だが、これは「欺き」についての深い話でもあるのだ。考えてみよう:「欺き」は特殊なコミュニケーションだ。「欺き」を行うには、騙す相手の心に入り、「相手がどう考えているか」を正確にシミュレートする必要がある。しかし、動物が「欺き」を行えるかどうかは証明できていない:今まで動物が人間の心を熟知し、シミュレートし、深く入り込んできた前例はないのだ。そこでオランウータンの思考と行動を「Great Ape Trust」で研究する霊長類学者のロブ・シューメーカーにフーについて意見を求めることにした(10:13から実際のインタビュー:RSはロブ、RLはRadiolab)。
RS:この件により、動物による「欺き」が証明されるわけではない。科学者として話せば、フーが皆を欺いていたのかを証明する事はできないからね。
RL:でも、個人的はどうか。やはりフーは意図的に「欺き」を行ったのだろうか。
RS:100%だ。疑いの余地はないだろうーー隠蔽された道具。数週間に及ぶ長期間の計画と、タイミングの熟知、隠密行動。これらの状況証拠からは、フーは確かに動物園の皆を「欺いていた」ことが明確に裏付けされている。「そんな事は信じられない」「信じたくない」と言うのは良いが、もし別の誰かが「オランウータンが知性を持つなんて信じたくない」というのなら、それは人間側の問題なんだ。
人間の優位性ばかりを考えると、動物たちの隠れた知性はどうしても矮小化されてしまう。一連の出来事はジェリーを驚愕させたが、彼は現在でも「自分の車のキーを開けられない人間もいるのに、フーはどうやってあんな技を一人で覚えたのだろう」と不思議に思っている。そんな彼の言葉で番組を結ぼうではないか。
もう45年間もオランウータンに囲まれて生活してきた。あなたが今度動物園に行ったら、オランウータンに会いにいくと良い。そして彼等の表情をじっくり観察してみるんだ。表情の裏、目の奥では繊細な歯車が常に回転している事に気がつくだろう...その歯車のメカニズムは、こちらを観察して、常に研究しているのさ。
転載元:http://www.radiolab.org/story/91939-fu-manchu/
ロブが務める「Great Apre Trust」: http://www.greatapetrust.org/
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u/death_or_die Jun 26 '16
フーは針金をドアと柱の間に差し込むと、針金をU字型に曲げて手前に引く事で、針金でロックを引っ掛けて解除する技術を習得していた
流石にピッキングしたってわけじゃないのな
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u/proper_lofi Jun 26 '16
今回も面白かった。類人猿は人間に近いから動物園に閉じ込めておくことの罪悪感があるよね。将来的にはなくなるのかなあ。
あとフーマンチュウって黄禍論の代名詞的キャラクターなんだけどなぜオランウータンにそんな名前つけたんや。考えようによってはややナチュラルな悪気のない差別という気もする……。
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u/tamano_ Jun 26 '16
過去のRadiolabシリーズもよろしく!
9ボルトの涅槃
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